病と闘う子どもを笑顔に!「サンタラン」が紡ぐ、次世代育成支援の輪【前編】

東京医科歯科大学 教授 森尾 友宏さん

「サンタラン」というイベントをご存知でしょうか。 2018年12月23日、明治神宮外苑で開催された「東京グレートサンタラン2018」。サンタクロースの衣装を着て楽しく走り、日本にいる病気と闘う子どもたち、そして海外の貧困の中にいる子どもたちを応援するチャリティーイベントです。 イギリスが発祥で、日本では大阪の大阪城公園で2009年より毎年開催され、恒例イベントとして市民に親しまれています。東京では2018年が初開催で、約2500人もの参加で賑わいました。DNPも“健康と福祉への貢献”、“貧困の撲滅”につながる「東京グレートサンタラン」の趣旨に賛同し、さまざまな形で応援しています。 そして今年も12月22日(日)に、「東京グレートサンタラン2019」が、駒沢オリンピック公園で開催されます。 もともと大阪のサンタランで実行委員長を務めてきた大阪大学医学部付属病院の澤芳樹先生とともに、東京でのサンタランの開催に実行委員として尽力されている、東京医科歯科大学の森尾友宏教授に、同イベントやチャリティー活動の様子、開催後の反響などをお話いただきました。

  • 2500人のサンタが走る! ファミリーで楽しめる季節の風物詩に
  • 病院が生活の場である子どもたちに必要な支援とは
  • 協賛企業との連携で「サンタラン」をより良いものへ

1989年東京医科歯科大学大学院医学研究科卒、医学博士。専門分野は小児血液・腫瘍・免疫・再生医療。米国ハーバード大学医学部・ボストン小児病院への免疫学研究留学を経て、2014年6月東京医科歯科大学教授に就任。2016年4月より同大学学長特別補佐、2017年4月より研究担当筆頭副理事、医学部医学科長も兼任。「小児医療は、未来へ投資する医療。病気が治れば、その後の長い人生を社会参加して有意に過ごしてもらえます」と平素から小児医療の重要性を訴えている。DNPとは、2014年から再生医療製品の安全性確保、作製効率化に関わる共同研究に取り組んでいる。

2500人のサンタが走る! ファミリーで楽しめる季節の風物詩に

東京グレートサンタラン2018の様子

Q:東京での第1回目となった2018年の「東京グレートサンタラン」は、大盛況だったそうですね。

森尾: 明治神宮外苑のサイクリングロードを2週するコースを設定したところ、大人から学生、子どもまで2500人もの方々に、サンタの衣装でイベント参加を楽しんでいただけました。ベビーカーでもOKなので、ファミリーでの参加も多かったですね。走るだけでなく歩いてもOKなので、気軽に楽しんでもらえたのでしょう。参加者がサンタの衣装のまま巨大なクリスマスツリーを人文字で描く、ピープルツリーにも挑戦しました。また、会場では協賛企業がブースを設け、さまざまなサービスも提供されました。DNPのブースでは記念撮影サービスを行っていましたが、たいへん好評でしたね。写真を2枚出力して1枚はお手元に、もう1枚には闘病中の子どもたちに向けて応援メッセージを書いてもらい、ボードに貼り付けて、クリスマスツリーのように仕立てたものを病院に寄贈いただきました。

DNPブースで写真をボードに貼り付けている様子

Q:チャリティー活動は、どのようなことをされたのですか。

森尾: 参加費などの収益金の一部を活用して、私の勤める東京医科歯科大学医学部附属病院をはじめ、慶應義塾病院、順天堂大学病院など5つの高次医療機関に入院している子どもたちへ、本やおもちゃなどのクリスマスプレゼントを届けさせてもらいました。そのほかに、DNPで作成いただいたクリスマスツリーボードも子供たちの病室の近くの中庭に設置しました。

小児病棟に入っているのは乳幼児から中学生くらいまでの子どもたちが多く、白血病や免疫不全、先天性心疾患などさまざまな難病の治療を受けながら、長い間病院での生活を余儀なくされています。特に昨今は感染症予防の観点からも外部の世界と隔てられがちで、こうしたイベントでの外部との触れ合いは子どもたちにもそのご家族にも、たいへん喜んでいただけるものです。プレゼントをもらえることももちろんですが、クリスマス時期らしい賑わいの空気を感じられることが、子どもたちには何よりもの喜びだったと思います。

チャリティーとしてはそのほか、イベントの特別協力をされた認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパンを通じて、当日彼らのブースでケニアの子どもたちに向けたメッセージを募り、それと併せて絆創膏を200枚、現地に届けました。また、ケニアのマサイ族のコミュニティに循環診療車による医療支援も行い、交通手段の不便な場所に住む子どもや妊産婦の方への医療ケアサービスにつなげています。

病院が生活の場である子どもたちに必要な支援とは

インタビューにこたえる森尾さん

Q:小児病棟の様子をもう少し教えていただけますか。

森尾:長期入院中の子どもたちであっても、お正月などは可能な限り、家庭の温かさに触れてもらいたいので、一時退院をしていただいています。一方、直前となるクリスマスは多くの子どもたちが病棟で過ごすことが多いです。そうしたことから、小児病棟ではクリスマスは七夕と並ぶビッグイベントになっています。願い事やメッセージで夢を膨らませられる良い機会なのです。

また、「東京グレートサンタラン」の企画運営には、中高大学生30名ほどから成る「学生子ども会議」が主体的に関わっています。彼らが子どもたちへのプレゼントを考えるために小児病棟の様子を知りたいと言ってくれたので、東京医科歯科大学病院で子どもたちの要望に触れる機会も提供させてもらいました。当院の小児病棟には、病気や治療への恐怖や不安、入院による寂しさや孤独感に向き合う子どもたちとご家族のために、心理社会的側面からサポートをする「チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)」という専門職を置いています。そのCLSが相談にのりながら、学生子ども会議のメンバーが子どもたちの年齢や状況に合わせて、いろいろな種類のプレゼントを取り揃えました。

Q:小児病棟では、どのようなボランティア活動が求められるものなのでしょうか。

インタビューにこたえる森尾さん

森尾: 一般に、各種ボランティア団体が訪問して歌や楽器演奏などを披露することは多いと思います。当院ではCLSが意欲的で、葛西臨海公園水族館に協力いただいて水槽を持ち込み、海の生き物に触れられたりする移動水族館などを企画しています。同様に、病院にいながら天体観測を体験できる、移動プラネタリウムなどもありましたね。

こうしたイベント的なお楽しみも良いのですが、海外ではもっと日常的に、食事を摂るお手伝いをしたり、話し相手になったり、本の読み聞かせをしたりといったボランティアが出入りをしています。そのように外部の人々と普段から触れ合えることは、子どもの発育上にもたいへん重要なことです。社会のルールや常識を学ぶ機会になるのですが、日本の小児病棟ではそうした外部との関わりが少ないのが実情です。それもあって親御さん、特におかあさんが子どもと一心同体となって長期の闘病に付き添われ、疲弊してしまうといった問題もあります。一人で抱え込まずに、入院生活の見守りにおいて多くの人の手を借りたり、また、周りがそうした親御さんの苦労に気づき、手を差し伸べられたりするようになると良いですね。

たとえば、「キープ・ママ・スマイリング」というNPO法人では、子どもに付きっきりで、ご自分の食事は子どもの検査中などにそそくさと売店で買ってきたもので済ませることが多いおかあさんのために、シェフによる温かい、季節感ある食事を提供しています。このNPO法人を発足されたのは、ご自身が付き添いで苦労されたおかあさんです。このように、当事者でないと分からないことがありまして、普通の生活をしている一般の人々が、そうしたことにもっと気づくことが大事です。それがボランティア活動の真髄ではないでしょうか。「サンタラン」のようなチャリティーイベントが、こうした問題に対して何かしらの気づきを与えてくれるきっかけになればと思います。

協賛企業との連携で「サンタラン」をより良いものへ

Q:子どもの医療・福祉には、いろいろな問題があるものなのですね。私たち一人ひとりが気づき、社会全体で解決していきたいですね。

森尾: 学生子ども会議のメンバーも、プレゼントを届ける以外にもできることはないかと考えています。たとえば、病院の近隣には入院に付き添う家族が寝泊りできるペアレンツハウスといった施設があるのですが、まだまだ設備が十分とはいえません。そちらに、簡単な調理に役立つ新型電子レンジや、身体に負担の少ない寝具などを寄贈するなどのアイデアもあるようです。

「東京グレートサンタラン」には、DNPをはじめ、数多くの企業に協賛をいただきました。イベント当日のブースでのサービス提供もたいへんありがたく思っております。それぞれの企業ならではの技術や得意分野を通じて貢献いただき感謝しかありません。実は初年度の立ち上げでもっとも苦労したのは、開催や運営そのものよりも、協賛いただける企業への協力依頼の部分でした。2年目以降はもう「仲間」といった感覚になり、次はどんなことをやっていこうかと支援の内容もブラッシュアップしていけるものですが、最初の実績のない段階でご理解と関心をいただくのは本当に大変なことでした。

DNPブースの写真撮影アトラクションの様子

そうした中で、ヘルスケアや子どもの生活に関わる製品やサービスを提供している企業へお声がけをしてきました。DNPとは、私自身がもう5年余り共同研究を行っていて、それを通じて信頼関係ができていたことがご縁となりました。日頃のやり取りのなかで、企業としての懐の深さを感じていたため、サンタランの協賛について声をかけさせてもらったところ、社会貢献活動にも注力されているとのことで、快くご協力をいただけることとなりました。実際に、当日はブースでの写真撮影サービスのほかにも、多くの社員の方たちがボランティアやランに参加してくださいました。当日のボランティアスタッフの人数は、数ある協賛企業の中でももっとも多かったのではないでしょうか。継続して強力なサポートをしていただいていますし、個人的に表彰させていただきたいくらい感謝しています。

Q:それでは最後に、今年の「東京グレートサンタラン2019」のイベント告知をお願いします。

サンタ帽を手にする森尾さん

森尾:クリスマスにサンタ姿で駒沢オリンピック公園を走るという、楽しみながら思い出作りをするだけで、国内外の病気や貧困と闘う子どもたちを支援できるイベントです。チケットを購入いただければサンタの衣装はこちらでご用意(持ち込みも可)しますので、ぜひお気軽にご参加ください。

今年もお子さま連れでの参加はもちろん、ベビーカーでの参加や、犬を連れての参加もOKですので、ぜひご家族やお友達、近所の方などをお誘いあわせのうえ、ご参加いただければありがたいです。

病院のベッドでクリスマスを過ごさざるを得ない子どもたちに、クリスマスプレゼントを贈って笑顔にする“本当のサンタ”になってみませんか? ご興味のある方は、公式ホームページで詳細をご確認ください。よろしくお願いします。

東京グレートサンタラン
日時: 2019年12月22日(日)10:30~15:00 ※雨天決行・荒天中止
会場: 駒沢オリンピック公園
ラン: 9:30受付・10:30スタート
ファンウォーク: 10:30受付・13:00スタート
オープニングセレモニー: 12:20スタート
「東京グレートサンタラン2019」公式ホームページ  https://santarun.jp/

森尾さん

 

後編では、「東京グレートサンタラン2019」の開催後に、イベント当日の様子や反響、今後の活動における展望などをお聞きします。