DNPの未来を体現するグラフィックエレメント。そのデザインに仕掛けた秘密とは?

向かい合い話をする三澤さん(右)とDNP加藤(左)

2020年はDNPがさらに大きく変革するとき。人々と社会に新たな価値を提供する“第三の創業”の実現に向けた取り組みが一層加速しています。この「変革への挑戦」の意味も込めて、DNPのコミュニケーションツールのデザインフォーマットとなる「グラフィックエレメント」を約10年ぶりに刷新しました。デザインを担当したのは日本デザインセンター 三澤デザイン研究室。今回はアートディレクターの三澤遥さんが、DNPの推進役であるコーポレートコミュニケーション本部 ブランド戦略室の加藤敦朗と、制作プロセスやデザイン刷新への思いを語り合いました。

  • 知るほどにワクワクするDNPの可能性をデザインでどう表現する?
  • 新グラフィックエレメントに仕掛けた、ある驚きの設計とは?
  • 「使う人がデザインを完成させる」実験的試み

多様な強みが集まって“未来のあたりまえ”をつくる。
知るほどにワクワクするDNPをどう表現する?

対談の様子 写真右に三澤遥さん、左にDNP加藤敦朗

写真右:日本デザインセンター三澤デザイン研究室の三澤遥さん 写真左:大日本印刷株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 ブランド戦略室の加藤敦朗


加藤
最初に、三澤さんが抱いてきたDNPのイメージをうかがえますでしょうか? また、今回の制作の依頼をどう受け止めましたか?

三澤
DNPは、誰もが知る信頼のブランドですよね。印刷や情報に関する事業分野では揺るぎない会社だというイメージがあります。このお話をいただいた後に、DNPにある「P&Iラボ」(共創をテーマにしたプレゼンテーション&コラボレーション施設)を見学させていただいたんですが、従来のいわゆる“印刷物”だけでなく、電子デバイスや産業資材など多様なテクノロジーを生かしている会社だと知って驚きました。

加藤
事業が多岐にわたっているので、私たちも入社して何年かは、「うちの会社、こんなこともやっていたんだ!」と初めて知ることがたくさんあります(笑)。どんどん新たなコト・モノが生まれているので、正直まだ自分が知らないこともあるかもしれません。

三澤
でも、それが逆に面白いと思ったんです。深くて広い海みたいで。奥深くて全容が見えないからこそ、知ったときの新鮮な驚きがつねにある会社だと。「P&Iラボ」で私がときめいたのは、皮膚に貼りつけられる薄さ1mmほどのスキンディスプレイと、緻密な幾何学模様を加工する彩紋彫刻……。こうしたものには何十年も前からの技術が生きているとうかがいましたが、見てもすぐに真似できない、簡単には到底追いつけないと感じました。これらを使って新しいデザインを考えたら面白いだろうなってワクワクしました。

私たちは手を動かして実験的な「あそび」をする中から、新たなデザインを生み出していくことを目標のひとつにしていますが、DNPではその技術から「未来のあたりまえ」を生み出していくために真摯に日夜取り組んでいます。多彩な才能を持つ人たちの集まりであり、外部のパートナーともつながりながら、新しいコトをふくらませていく力がある。世の中に役立つ、モノづくり・コトづくりの本質が見えた気がしました。

資料を手に話をする三澤さん

加藤
ありがとうございます。DNPの企業イメージは、これまで「信頼」や「安定」などと言っていただけることが多く、もちろんそれも大切で維持していきたいのですが、実は、テクノロジーを応用して新たなコト・モノを生み出すのが得意な、イノベーティブな会社でもあるんです。

「P&Iイノベーション」という事業ビジョンを掲げ、「P&I(印刷と情報)」というDNP独自の強みとパートナーの強みを掛け合わせて、新しい価値を生み出していく“第三の創業”への挑戦が本格化する今、社外の皆さまにイノベーティブな会社だということをもっと知っていただきたいし、私たち社員も自覚と覚悟をより高めていきたい。三澤さんにお願いしたのは、私たちのそんな企業姿勢を象徴するようなグラフィックエレメントだったのです。

そうしたオーダーに対して、三澤さんは、グラフィックエレメントのデザインをどのように考えたのでしょうか?

三澤
私はデザインを考えるときは、ラフスケッチから始めたり、あるいは最初からデザインを組んでしまったりと、直感にしたがってプロセスを毎回変えています。自分を迷路に追い込むことで、新たな思考回路がつくられてアイデアが生まれやすくなるのです。今回、DNPのブランディングに関わらせていただくにあたっては、徹底して「聞き役」になることからスタートしました。

なぜなら「どんなグラフィックエレメントにするか?」――その答えは、DNPの中にあるからです。DNPの仕事をつぶさに知り、そのなかで働く人の思いや夢を聞き出すことから始め、私たちが「これカッコいいでしょ」と押しつけるデザインではなく、DNPから湧き出てくるエッセンスをつかんでカタチにするデザインにしたかった。それが今回のグラフィックエレメント制作の要になったと思います。

シンプルを突き詰めたグラフィックエレメント、
そのデザインに仕掛けた、ある驚きの設計とは?

加藤
三澤さんの「グラフィックエレメント制作の要」について、もう少し詳しく教えてください。

三澤
DNPの「強み」と「これから」を考えたとき、「変わらずに変わり続ける」というデザインテーマがチームのコピーライターから出てきました。加藤さんのお話しのように事業は多岐にわたるのですが、すべては印刷プロセスで培った技術・ノウハウを出発点にしている。変わらぬ確固たる部分があるからこそ、多様に変わり続けることができる会社だと考えました。

その変わらぬ部分を象徴するのが、「DNP」のコーポレートマークです。「DNPブルー」を使ったタイポグラフィは、力強い存在感を放っています。多くの人が知るこのマークは普遍的なシンボルとして変えずに、ブルーのラインを自在に動かすことで社内の社員同士や部門のつながり、社外のパートナーとのつながり、さらには「未来へのつながり」を表しました。

新グラフィックエレメントのイメージ図

新グラフィックエレメントでは、コーポレートマークの最小単位であるブルーラインを自在に拡張させていく

加藤
私たちも、コーポレートマークの「DNP」にブランド力を蓄積してきた――という特別な思い入れがあります。今回、このマークを変えることなく、私たちの「ステップアップ」や「拡大」をイメージさせる自由なラインを付け加えていただいたと思っています。三澤デザイン研究室の案を初めて見たとき、DNPの「次のカタチ」を表現していただいたという感動が大きかったです。

このデザインについて、設計からひもといてみると、見た目はシンプルなのですが、その裏側には緻密な設計図が隠されているんですよね。グラフィックエレメントのパターンは、方眼状のグリッドに沿って展開されるのですが、このグリッド、よく見ると、正方形じゃない、とか。

デザイン資料を手に取るDNP加藤

三澤
はい。グリッドは通常の正方形じゃなくて、タテ1:ヨコ1.18の比率で設計しました。これはコーポレートマークのタイポグラフィのタテ・ヨコ比率から生まれている、DNP独自のグリッドです。そして、ブルーラインの太さはDとPのタテ線の太さと一致します。つまり、「DNP」を出発点に、ブルーラインが派生していく広がり、つながりを見せています。

グラフィックエレメントの中で一番大切なのはコーポレートマークです。そのアイデンティティをラインで無限に広げていく。ラインが伸びることでDNPの世界が無限に広がっていくのです。

方眼状のグリッドを説明する図

方眼状のグリッドに沿って形を変えることができるグラフィックエレメント

加藤
実際に、カタログや企画書、パンフレットなどに組み込んでみると、さりげなくて主張しすぎない。でも、それぞれの制作物を一堂に集めて並べてみると、一つの世界が生まれてきます。共通のテーマでつながり、多様な技術や才能の集まりであるDNPという会社が浮かび上がってくる仕掛けなのですね。

制作物の展開例が並ぶ

制作物の展開例

使う人がデザインを完成させるグラフィックエレメント

加藤
「使う人が自在にデザインできる」のが画期的ですね。

三澤
このグラフィックエレメントは生きもののようです。コーポレートマークの位置を変えたり、ラインを伸ばしたり、直角に曲げたり、矢印に変えたりと、ルールの中であればアメーバのようにかたちを変えながら拡張していくことができます。グラフィックエレメントを使って、ツール全体のデザインを完成させるのは、使う人自身です。一人ひとりの目的や思いに合わせて、エレメントを形成するプロセスを楽しんでいただければと思っています。

加藤さんやDNPの皆さんと一緒に頭を悩ませながら「誰でも使いこなせるユニバーサルなデザイン」のルールを考えるのは、むずかしくも面白い体験です。現在は、使用する方たちの反応を見ながらアップデートを並行して進めています。

加藤
みんなが使うことで生きてくるデザインって楽しいですよね。グラフィックエレメントとして共通のルールでつながり、それぞれが自由に表現できる――。これって「未来のあたりまえをつくる。」という共通の夢を追いかけているDNPの社員が、自由な発想で、それぞれ新しい価値を生み出す仕事に取り組んでいることと似ているな、と思います。

三澤
パンフレットや封筒など、このグラフィックエレメントが入ったDNPのツールを手にするお客さまも、自由だけど変わらぬ技術力と誇りでつながっているDNPのパワーを感じ取ってくれるのではないかとひそかに期待しています。

このグラフィックエレメントは、DNPの皆さんに育てていっていただくものだと捉えています。どう生かされて、どんなふうに育っていくか。これからの変化を私も楽しみにしたいと思っています。

【プロフィール】

三澤遥さんのプロフィール画像

アートディレクター 三澤遥(みさわ・はるか)さん
日本デザインセンター三澤デザイン研究室主宰。ものごとの奥に潜む原理を観察し、そこから引き出した未知の可能性を可視化する試みを、実験的なアプローチによって続ける。これまで手がけた仕事は、「KITTE」のロゴ、TOKYO BIG SIGHTのVI(ビジュアルアイデンティティ)、上野動物園「UENO PLANET」のWEB、アニメーションムービー、ポスターなどがある。

2018年に、DNP文化振興財団が運営するギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催された企画展「続々 三澤 遥」では、磁気を帯びた無数の紙が動き続ける「動紙」、飛行する紙の舞いを研究した「散華」、デジタル印刷・加工の技術を多様に応用した「現象体 無版×ファインペーパー」など11の創作プロジェクトを展示した。

DNP加藤敦朗のプロフィール画像

大日本印刷株式会社 加藤敦朗(かとう・あつろう)
グラフィックエレメントの刷新を担当。コーポレートコミュニケーション本部ブランド戦略室に所属し、DNPとして望ましいコーポレートブランドの確立をめざし、コーポレートマークやデザインの管理を行うほか、企業広告などの広告・宣伝活動を担う。

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