大日本印刷 代表取締役社長の北島義斉と元ラグビー日本代表のキャプテンの廣瀬俊朗氏が並んで立っている画像

個のウェルビーイングと多様性が活きる組織風土に

個のウェルビーイングや多様性が重視される時代に「組織」はどう変わるべきか。元ラグビー日本代表のキャプテンとして、多様なメンバーが力を発揮できる組織づくりに取り組んできた廣瀬俊朗さんを招き、これからの組織づくりと進むべき未来を大日本印刷 代表取締役社長の北島義斉が対談しました。

目次

得意分野で力を発揮する多様性こそがチームを強くする

北島義斉社長(以下、北島) 私は学生時代からのラグビーファンなので、廣瀬さんが東芝で活躍されて、日本代表キャプテンまで務められた現役時代をよく知っています。2015年のW杯イングランド大会で、日本代表が南アフリカに劇的勝利を収めてからは特にラグビー人気が加熱していますが、その流れを生み出した一人が廣瀬キャプテンだったと感じています。

廣瀬俊朗さん(以下、廣瀬) ありがとうございます。 私の夢は「日本のラグビーを憧れの存在にする」ことでした。現役時代は、その夢をチームで共有し、一つになって向かっていくことができました。そして今、後輩たちの力でますます盛り上がっていることを誇らしく思っています。

北島 ラグビーには「One for All, All for One」の精神があります。一つの目標に向かって、一人ひとりが自分の役割をしっかり理解し、みんなで力を合わせていく。そこにドラマが生まれるんですよね。

廣瀬 ラグビーの魅力は、まさに多様性にあるんです。私のポジションは走りを得意とするウィングと、司令塔のスタンドオフでしたが、スクラムを組むフォワードは絶対にできません。あのポジションを務めるには、過酷なトレーニングと強靭な体格が必要です。

一方で、フォワードは、バックスのような華麗なパスさばきは得意ではありません。それぞれにできることが異なり、誰一人欠けても勝つことはできません。そこに、お互いに対するリスペクトが生まれるんです。

株式会社HiRAKU 代表取締役/ 元ラグビー日本代表キャプテン 廣瀬 俊朗氏

北島 まさにDNPという会社もラグビーチームと同じだと思いますね。3万6千人を超える社員たちは、それぞれの得意分野で活躍するかけがえのない存在です。

私は社員やグループ同士のそれぞれの強みを掛け合わせる「オールDNP」の取り組みを日頃から呼びかけています。多様な個が集まったとき、ラグビーのスクラムや、フォワードとバックスの連携のように、とてつもないパワーや驚くような発想が生まれると考えています。

廣瀬さんがおっしゃるように、チームで夢を共有する大切さ、お互いをリスペクトする精神は、DNPが取り組んでいる組織風土改革でも大いに参考になります。

「ヘルスウェルビーイング表彰」で価値創出の基盤を強化

北島 廣瀬さんは現在、教育ビジネス・人材開発事業や社会貢献活動に取り組みながら、慶應義塾大学大学院でリーダーシップの研究をされているとお聞きしました。

廣瀬 これまで自分が実践してきたリーダーシップスキルを理論化し、その効果を実証できると、他のスポーツや企業の組織マネジメントにも応用できるのではないかと考え、研究に取り組んでいる真っ最中なんです。

研究者の視点からも、DNPが今年開始した「ヘルスウェルビーイング表彰」はとても興味がありますね。まさに、いいチームづくり、前向きな風土づくりにつながる表彰制度だと感じましたが、北島社長はどのような思いで始められたのでしょうか?

北島 私たちが「より良い未来」をつくり出していくには、その活動をしっかり評価し、強化していく働きかけが重要だと考えています。そこで2020年に従来の表彰制度を見直して、新たな価値創出を実現し、ビジネス化して社会に貢献した取り組みを表彰する「DNPアワード」をスタートしました。それに加えて今年新設した「ヘルスウェルビーイング表彰」は、その価値創出の基盤となる「活力ある職場風土づくり、組織・チーム力強化」を実現した取り組みを称えるものです。

職場の心理的安全性や心身の健康の向上などの事例を表彰する「ホワイト部門」と、安全な職場風土の醸成や作業環境の改善などの事例を表彰する「グリーン部門」があり、すべての社員、すべての職場がエントリーできる制度です。

廣瀬 誰しも参加できる場をつくっていくのは、素晴らしいアイデアだと思います。場をつくることで「自分たちもやってみようか」という意識が自然と芽生えていきますから。

ヘルスウェルビーイング表彰とは
価値創出の基盤となる「活力ある職場風土づくり、組織・チーム力強化」の取り組みを以下の視点に基づいて、特に優れた取り組みを表彰しました。「ホワイト部門(健康)」「グリーン部門(安全)」に、社内から約130件の応募があり、それぞれ10件が選ばれました。

「ホワイト部門(健康)」「グリーン部門(安全)」に該当する活動を一覧で紹介。

  • 写真左)危険・汚い・不便・無駄と気づいたことを付箋に書いてボードに貼る「気づきボード」で職場を改善。DNPエンジニアリング・北陸工場
  • 写真右)包丁よりよく切れると言われているドクター(版からインキを搔き取る部品)のオリジナルカバーを制作。DNPイメージングコム・狭山工場

北島 表彰式では、受賞者たちが晴れがましい表情で登壇してきて、私もうれしくなりました。日頃、安全であることがあたりまえとされる製造現場で頑張っている社員が表彰の舞台に上がるのは素晴らしいことです。それに、他の職場での取り組みはなかなか見えないので、表彰の場で良い取り組みをみんなで共有して、社内に水平展開していってもらえたらと考えています。

廣瀬さんには事前に「ヘルスウェルビーイング表彰」で受賞した活動事例をご覧いただきました。いかがでしたか?

大日本印刷株式会社 代表取締役社長 北島 義斉

廣瀬 どれも素晴らしい取り組みでした。グリーン部門で私が印象に残ったのは、製造現場の作業の身体的負荷を「見える化」して、改善する職場健康診断の仕組みですね。ラグビーもポジションによって身体負荷が大きく異なります。仕事の大変さって、他の人からは分かりにくかったりしますので、職場の仲間の大変さを理解し合うことは、いい職場の風土づくりにもつながると感じました。

ホワイト部門では「good job & thank you活動」をしているチームがありました。この褒め合うことが組織ではとても大切です。日本代表キャプテン時代も最初にやったチーム改革が、褒め合うカルチャーの浸透でした。日本のスポーツ指導では叱られることはあっても、褒められる場面はとても少ないように思います。でも、いいプレー、いい行動をしたら、すぐに褒めることはとても効果的です。ただ、褒めるだけではなく「どこが良かったか」を具体的に褒める。そうすると、褒められた本人も自信が高まり、良い行動の強化につながると思います。

北島 廣瀬さんがおっしゃるとおり、称賛すること・承認することは、チーム力を高める原点だとあらためて確信しました。「ヘルスウェルビーイング表彰」などを通じて、仲間の取り組みを〈知る〉〈称賛する・承認する〉〈学ぶ〉という好循環をDNPの組織風土として定着させていきたいと思います。

対談の様子。DNP北島義斉と廣瀬俊朗氏が椅子に座り、笑顔で話している。

個とチームの成長を加速させるDNPの組織風土改革

廣瀬 DNPは組織風土改革に取り組んでいるとのことですが、これだけ長い歴史がある大きな組織で、組織の風土を変えていくというのは大きな挑戦ですね。

北島 長い歴史があるからこそ、変えていかなければならないと考えていますし、創業期の我々の役割や社会環境とは大きく変わっています。紙への印刷をメインにして仕事を受注してきた立場から、自分たちから新しい価値やソリューションを発信していく立場に変わりました。

社員一人ひとりが「自分たちが社会をより良くするんだ」という使命感と誇りをもち、健やかに働ける環境をつくりたい――そのために<DNPグループ健康宣言>(※1)を掲げ、社員の「こころの資本」と、職場・チームでの「心理的安全性」を重視した組織風土改革を多角的に進めているのです。

リフレッシュエリアにある運動機器を体験する北島と廣瀬氏

社員が就業時間中に軽い運動ができるリフレッシュエリア

バランスボールに座る北島と廣瀬氏

廣瀬 新社屋にあるリフレッシュエリア(※2)を拝見しました。職場でありながら、心身ともにくつろぎ、社員同士の横のつながりが生まれる場がある。そうした環境も社員の働きやすさや横のつながり、自由な発想を生み出すのに一役買ってくれると思いました。組織マネジメント面では、どのような取り組みをされているのでしょうか。

  • 2 多様な休憩スタイルに合わせて考案した、軽い運動ができるリフレッシュエリア。ヨガマットやバランスボール、運動機器などがあり、社員は就業時間中のリフレッシュに活用できます。

北島 例えば、DNP価値目標制度(DVO制度)(※3)は、チームで目標を掲げ、そのプロセスを「見える化」しながら、チーム全体で成長していく仕組みです。チーム全員がワクワクする挑戦的な目標を掲げ、役割分担をしながらチーム意識を醸成し、目標達成をめざします。

このなかには、リーダーとメンバーの1 on 1ミーティングも含んでおり、個人の自律的なキャリア形成も積極的に支援していきます。また、チームで目標達成度を共有し合う「チェックイン・チェックアウトミーティング」も並走させて、個とチームで相乗的に成長していく仕組みです。

廣瀬 プロセスの「見える化」というのはとてもいいですね。結果が出るまでは時間がかかるし、思いどおりの成果につながらないこともあるかもしれない。でも、途中のプロセスを評価・チェックしてもらうことで、モチベーションも高まります。結果的に目標達成のスピードが速まり、途中の方向修正を図ることもできる。チームの結束を高めながら、個の成長を加速させていく画期的な制度ですね。

北島 仕事の喜びは、自分自身やチームが成長することで得られると思っています。社員一人ひとりに、成長を通じてDNPで働く喜びや誇りをいっそう実感してもらう。それが、私たちがめざす組織風土改革です。

TEAM FAIR PLAYとDNPの連携で、より良い未来をつくり出す

北島 2022年にスタートした「DNP×TEAM FAIR PLAY(以下、TFP)」のコラボレーションの取り組みも成長と進化を遂げていますよね。

廣瀬 「暮らし/環境/健康」をテーマに、アスリートと企業の連携ならではの視点で社会課題の解決に取り組む「TEAM FAIR PLAY」は、2022年からDNPとコラボレーションしています。社員の皆さんにお会いするたび、「DNPってこんなこともやっているんだ!」という発見が多いんです。

2022年は、DNPが協賛している北海道マラソンやTokyo Great Santa Runで、社員の方と協力して、ランナーに「DNP環境配慮パッケージ GREEN PACKAGING®※4」の紙カップで甘酒ドリンクを提供させていただきました。2023年の5月には、三重県の仮想自治体「美村(びそん)」で、地方創生につながるDNPのDX技術を体感しました。次は何を一緒にできるだろう?といつもワクワクしています。

  • 4 DNP環境配慮パッケージ GREEN PACKAGING®は、3R(Reduce・Reuse・Recycle)+Renewable(再生可能資源活用)を基本に環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に向けて「CO₂の削減」「資源の循環」「自然環境の保全」という三つの価値を提供する製品・サービスです。詳しくは紹介ページをご覧ください。

TEAM FAIR PLAY×DNPの取り組み
廣瀬さんが主催するTEAM FAIR PLAYとDNPのコラボレーションの中から、2つの取り組みをご紹介します。詳しくはリンク先の記事をご覧ください。
〇北海道マラソンでの、DNPの環境に配慮した取り組み
「デザインとスポーツの力で、再生プラスチックに付加価値を。」

北海道マラソンで甘酒ドリンクを配布

容器は、環境に配慮した素材を使用したDNP製品である紙カップを使用。

〇三重県の仮想自治体「美村」での、地方創生につながる取り組み
「元ラグビー日本代表・廣瀬俊朗が訪れた『ある村』 DNPが『地域DX』を推進している、意外な背景」

写真左から、廣瀬俊朗氏、「三重広域DXプラットフォーム」構築に取り組むDNPモビリティ事業部 椎名隆之、MRT代表取締役社長 小川智也氏

北島 デザインの力で再生プラスチックを活かすDNPの取り組み「Recycling Meets Design® Project」にもご参加いただきました。スタジアムの椅子に着目して、ラガーマンの腹筋や大胸筋などの画像を使ったスポーツ観戦用のボディクッションをつくるアイデアもすごく面白いですよね。アスリート目線から、我々の思いつかないようなアイデアや発想のヒントを毎回いただいていると感じています。

廣瀬 私は今、車いすラグビーやブラインドラグビーなど、障がい者スポーツの振興にも力を入れています。そこでも、DNPの技術力で解決できる社会課題はまだまだあると期待しています。

北島 これからも廣瀬さんとDNP社員でタッグを組み、「より良い未来」をつくる活動を続けていきたいと思います。

世の中の人たちが困っていること、あったらいいなと思っていることに解決策を提供し、「未来のあたりまえ」をつくっていくのがDNPの描く夢です。その夢を共有する同志で、これからも新たな扉を開いていきたいと思います。

プロフィール

ポートレート写真。椅子に座って笑顔の北島

北島 義斉 (きたじま・よしなり)代表取締役社長
1964年生まれ。1995年大日本印刷入社。2001年取締役市谷事業部担当、2003年常務取締役、2005年専務取締役、2009年代表取締役副社長、2018年から代表取締役社長。

ポートレート写真。椅子に座って笑顔の廣瀬氏

廣瀬 俊朗(ひろせ・としあき)さん
株式会社HiRAKU 代表取締役/ 元ラグビー日本代表キャプテン。

2007年日本代表選手に選出され、12年~13年にキャプテンを務めた。2016年現役引退。2019年にビジネス・ブレークスルー大学大学院にてMBAを取得し、株式会社HiRAKUを設立。現在はチームや組織づくり、リーダーシップのアドバイスやサポートを行うほか、スポーツの普及、教育・食・健康・地方創生に重点を置いた多岐にわたるプロジェクトにも取り組んでいる。

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