重点テーマ:人権・労働
ダイバーシティ&インクルージョン
基本的な考え方
多様な個を活かすダイバーシティ&インクルージョン推進
DNPグループは、人的創造性(付加価値生産性)を飛躍的に高めることを目指し、経営基盤を強化する非財務戦略の一環として、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進に取り組んでいます。私たちは、同質で均一な組織から、多様性に富み、それが活かされる組織への転換こそが、社会課題の解決や新しい価値の創出につながると考えています。
社員一人ひとりの多様な個を尊重し、その強みを掛け合わせることで、持続可能な成長を実現する企業グループであり続けるために、制度の拡充や風土醸成に向けた取り組みを積極的に進めています。こうしたD&Iの推進は、社外からも高い評価を受けています。
私たちは、「多様な人材が活躍できる風土の醸成」を重要課題と捉え、社員アンケートなどを通じて、会社の取り組みと職場の実態とのギャップを把握し、改善に努めています。
そのため、DNPグループでは2023~2025年度の「ダイバーシティ経営中期ビジョン」として、「インクルージョンがあたりまえになっている」を掲げています。すべての職場でこの状態を実現し、社員一人ひとりの力を最大限に引き出し、多様な強みを掛け合わせて、新しい価値の創出へとつなげていきます。
「インクルージョンがあたりまえになっている」状態とは・・・

多様な個がお互いをインクルージョン(包摂)し、主体性を持った個の挑戦を周囲が支援します。その挑戦の結果を経験として評価し、「対話」を通じて、やりがいにつなげ、周囲から称賛を受けて、また挑戦する「インクルージョンがあたりまえになっている」状態を実現していきます。そうしたインクルージョンループがさまざまな部門で発生し、つながることで「オールDNP」としての総合力の強みをさらに発揮します。
方針
2020年に、ダイバーシティ推進に対するトップのコミットメントとして「DNPグループダイバーシティ宣言」を発表し、取り組みを一層強化しています。
DNPグループダイバーシティ宣言
1.
ダイバーシティ&インクルージョンの推進を先頭に立って取り組みます。
2. 管理職の意識を一人ひとりの違いを強みとして活かす「対話型スタイル」に変えます。
3. 社員一人ひとりが能動的に挑戦できる会社、新しい価値を創出する会社にします。
2020年7月17日
DNPグループ代表 北島 義斉
推進体制
DNPは、グループ全体にダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)を浸透・定着させるため、代表取締役副社長のもと本社基本組織として「D&I推進室」を設置しています。また、全国の各事業部ならびにグループ会社のD&I推進委員会・事務局と連携し、推進を加速させています。
推進体制を整備することで、概念図に示したとおり、トップのコミットメントに基づき、各職場でのD&I推進と一人ひとりの主体的な行動によって、「新しい価値の創出」に向けて、D&Iの取り組みを推進しています。
指標・目標
DNPは「ダイバーシティ&インクルージョン」に関する基本的な考え方に基づき、重要課題に対する具体的な施策について、それぞれ目標を設定し、継続的に取り組んでいます。
重要課題(D&I推進において注力するテーマ)
- 意思決定における多様性を高める(指標①・②)
- 両立支援(指標③)
- 心理的安全性のある職場風土の醸成(指標④)
- 当事者意識の醸成(指標検討中)
関連施策(重要課題に対応する具体的な取り組み)
- 女性活躍推進
- 男性育休取得推進
- アンコンシャス・バイアス研修
- ダイバーシティウィークの開催等
達成状況を測る指標 | 目標値 | 2024年度実績 |
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関連施策
- 多様な人材が活躍できる風土醸成
- 女性活躍推進
- LGBTQ+に関する取り組み
- 障がいのある社員の活躍推進
- 仕事と育児の両立支援
- 仕事と介護の両立支援
- ニューロダイバーシティに関する取り組み
- メンター制度
- D&I推進のあゆみ
多様な人材が活躍できる風土醸成
インクルージョンがあたりまえになっている状態の実現に向けて、すべてのDNPグループ社員を対象とした取り組みを行っています。
その取り組みを効果的に進めるために、社員アンケートなどを通じて、D&Iがどれだけ浸透しているか(D&I実感度)を把握し、その結果をもとに具体的な施策を展開しています。
アンコンシャス・バイアスへの取り組み
異なるアイデアや意見を活かす心理的安全性の高い職場風土の醸成に向けて、2023年度より、国内DNPグループ全社員を対象としたアンコンシャス・バイアス研修を開始しました。2025年度までに、自身のアンコンシャス・バイアスと向き合うための研修を、対象社員全員が受講することを目指しています。
研修は、DNP社長、役員、DNPグループ各社社長から開始し、職場への影響力の高い上位職位者から階層別に研修を進め、2024年度中に約3万人のDNPグループ社員すべてにの受講機会を設けました。
2025年度からは次のステップとして、組織としての気付きを目的とした職場単位でのプログラムも計画しています。
ダイバーシティウィークの開催
DNPでは社員一人ひとりがD&Iの取り組みに自律的に参加し、行動変容につなげることを目的として、2021年度より毎年2月に「ダイバーシティウィーク」を開催しています。社長メッセージで開会し、期間中に多彩なプログラムを用意しています。イベントへの参加を通して、社員がその年のテーマに対する理解を深めるだけでなく、実際の行動につなげることを目指しています。
基調講演には、DNPグループ社員の約3分の1にあたる約1万3千人がリアルタイムで参加しています。
また、各部門のD&I推進委員長である部門長や、グループ会社の社長によるコミットメントの発信を通じて、各職場でのD&I推進を後押しする契機としています。
D&I推進リーダー育成研修
DNPグループにおける新しい価値創出に向けて、職場のD&I推進を重要な経営課題と位置づけています。各部門のD&I推進委員会委員長のもと、職場の課題に対して責任をもって取り組むD&I推進リーダーを育成しています。D&I推進リーダーは、本部長クラスが担当し、任期を2年としています。
外部評価
D&I AWARD 2024「ベストワークプレイス」に4年連続で認定
女性活躍推進
DNPが持続的に新しい価値を提供し、より良い未来をつくるためには、経営における多様性をさらに高め、同質性により生じる弊害を回避することが重要な課題です。この課題に対応するため、DNPでは、2030年に女性役員の比率を30%超にすることを目指し、次世代の女性リーダーを育成するパイプラインの形成を進めています。この取り組みは、女性活躍推進法に基づく行動計画にも組み込まれており、組織の意思決定に関わる女性社員の継続的な育成に向けて、各等級の女性社員に向けた研修と組織風土の改革を体系的に実施しています。
スポンサーシッププログラム
意思決定の場の多様性を高めるため、2021年度に「スポンサーシッププログラム」を開始しました。このプログラムには全役員が責任を持って積極的に関与しています。 管理職(課長・部長級)の女性社員に対して、経営幹部(役員や副事業部長級の役職者)がスポンサーおよびメンターとして伴走します。三者での取り組みを通じて、女性社員はDNPグループの多様な強みを掛け合わせて新しい価値を生み出す「オールDNP」の視点や、より高い視座を身に付けていきます。一方、経営幹部は自組織において多様な人材が活躍できる職場環境の整備など自部門の職場風土の改革につなげていきます。
修了発表会における社長の開会挨拶の様子
実践型リーダーシップ研修
各層の多様性を高め、それを持続するため、DNPグループでは次世代の女性リーダーを育成するパイプラインの形成を目的として、リーダークラスに昇格した女性社員全員を対象に「実践型リーダーシップ研修」を行い、キャリアビジョンを早い段階で持ち、職場でリーダーシップを発揮し、経験を積むための基盤づくりを支援しています。
この研修では、約半年間にわたり、各部門でD&I推進の役割を担う本部長クラスの管理職が「チェンジエージェント」として参加し、女性受講者の考えや職場の課題と向き合いながら、視野を広げるための問いかけをしたり、共に考えるなど伴走することで、各部門のD&I推進や職場風土醸成にも活かしています。さらに、女性受講者とチェンジエージェントには学びのグループの場を提供しています。研修での学びを職場で実践し、相互にフィードバックしながら、女性の能力開発や職場の課題について議論するコミュニティとなっています。
実践型リーダーシップ研修におけるラウンドテーブルの様子
- ※2021年度までは、リーダークラスの女性社員を対象とした選抜型の研修として、本研修の前身にあたる『次世代女性リーダー育成研修』を実施していました。
外部評価
なでしこ銘柄 2021年、女性活躍推進に優れた上場企業として選定
J-Winダイバーシティ・アワード
- 2025年度「経営者アワード」、「個人賞 リーダー・アワード」を受賞
- 2024年度「企業賞 アドバンス部門」大賞を受賞
- 2023年度「企業賞 アドバンス部門」準大賞と「個人賞 リーダー・アワード」を受賞
- 2020年度「企業賞 ベーシック部門」ベーシックアチーブメント準大賞と「個人賞 リーダー・アワード」を受賞
LGBTQ+に関する取り組み
DNPは、社会で生きる多様な人々が求める価値を創出していくため、一層の多様性を活かす組織風土づくりに常に取り組んでいます。その一環で2019年度から、LGBTQ+の人々を取り巻く状況等への理解促進などを強化し、採用活動時の書類等への性別記入を必須としないことや、各種制度の見直しなど進めています。
研修・社内活動
■全社員向けのeラーニング
LGBTQ+当事者が抱える職場での問題を取り上げるとともに、あらゆる身体の性/性自認/性的指向/性別表現に関する基礎知識や、SOGI(性的指向・性自認)ハラスメントの防止など、必要性や意義を学ぶためのeラーニングを全社員に提供しています。
■社内活動
プライド月間やダイバーシティウィークなどの機会を活用し、セミナーなどによる啓発活動を行っています。
社内コミュニティ
LGBTQ+の当事者やその支援者である“アライ”を対象とした対話会の開催や、社内コミュニティを立ち上げ、インタラクティブな取り組みを継続的に進めています。
対外活動・協賛
社内の活動に加え、DNPの考えや行動を社外に伝えるため、DNPプラザ『みんなの「問い」文庫』でLGBTQ+理解促進につながる書籍特集の実施や、性的マイノリティに関する情報発信などを行う「NPO法人プライドハウス東京」に協賛するなど、さまざまな社会活動に参画しています。
外部評価
PRIDE指標 GOLD 2021年から4年連続受賞
障がいのある社員の活躍推進
DNPは長年、障がいの有無に関わらずあらゆる人が平等に暮らす社会を実現させる「ノーマライゼーション」の考え方を基本に据え、障がいのある人も活躍できる職場を目指し、グループ全体で採用や定着、活躍支援を推進しています。2019年2月にはこの取り組みを一層促進するため、障がい者雇用を中心とした株式会社DNPビジネスパートナーズを設立し、同年10月に特例子会社として厚生労働大臣の認定を取得しました。グループ各社での障がい者の採用を支援し、グループ内の横断的な業務を拡大するなど、さらに多くの人材が活躍できる場を創出していきます。
研修・社内活動
■研修
2024年度には、各職場の抱える現状の課題や今後の段階的な障がい者雇用率の引き上げを見据え、採用から定着に向けた具体的な対応を学ぶ「障がい者インクルージョン研修(管理職・採用担当編)」を実施しました。また、障がいのある社員が職場に配属される前に、配属先の社員が障害者インクルージョンへの理解を深める機会として10分間の動画を視聴しています。相互理解を促進することで職場への定着につなげています。
■社内活動
「介助犬体験イベント~介助犬を通じて学ぶインクルージョン~」などを通じて障がいへの理解を深める啓発活動を行っています。
社内コミュニティ
2024年2月に、障がい者インクルージョンコミュニティ「ほっとワーク」を社内に開設しました。障がいのある社員や障害のある家族を持つ社員の安心感を高め、障がいの有無にかかわらず社員それぞれの個性や能力、考え方を認め合い、活躍できる職場につなげています。
対外活動
2020年7月には、障がい者の活躍推進に取り組む世界的な活動である「The Valuable 500」の考え方や取り組みに賛同し、同団体に加盟しました。
仕事と育児の両立支援
出産・育児を迎える社員が安心して休業し、スムーズに職場復帰するために、仕事と家庭の両立を支援する環境づくりに取り組んでいます。その一環として、職場復帰後も能力を十分に発揮できるよう「育児休業からの復帰プログラム」を設けています。

仕事と育児の両立支援セミナー「カンガルーの会」
社員がパートナーとともに仕事と育児の両立について考え、現在の不安や悩み、将来のイメージなどを共有し、子育て期間中も生き生きとキャリアを築いていくためのセミナーを毎年開催しています。出産を1年以内に予定している社員とパートナーが参加する「プレパパ・プレママ向け」と、産休/育児休業中または3歳以下の子どもを養育する社員とパートナーが参加する「育児中のパパ・ママ向け」の「カンガルーの会」を展開しています。
男性育休取得促進
2020年12月、DNPは社内外に向けて、「男性育休100%宣言」を発信しました。発信後、取得率は年々向上し、ほぼ100%になっています。DNPでは男女問わず、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た社員に対し、育児休業制度等に関する事項の周知や休業取得の意向確認の面談を行っています。また、DNPグループの経営層が参加するD&I推進委員会での取り組みや課題の共有のほか、男性育休取得者の体験談を社内に公開し、育休取得の段取りや取得後の意識や行動の変化など、これから取得する社員の後押しと上司や同僚など職場の理解が進むようにしています。
しかし、社内調査の結果、男性育休の取得に対する懸念として「職場への迷惑」を挙げる社員が圧倒的に多いことが明らかになりました。こうした課題を受け、DNPグループでは2024年度、全社員を対象に、男性育休の取得促進と職場風土の醸成を目的としたeラーニングを実施しました。
また、育休の取得期間においても、より取得しやすい環境を整備するため、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画において、男性育休の平均取得日数に関する目標を設定し、継続的な取り組みを進めています。
その他育児支援制度
復帰後も、ベビーシッター利用料補助、保育施設料補助、看護休暇やライフサポート特別休暇といったさまざまな制度で社員やその家族の育児と仕事の両立を支援しています。
外部評価
Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業 2023年度、2024年度、2年連続選定
くるみん 2007年、2012年、2015年認定
仕事と介護との両立支援
社員に対して、介護に関する基本的な知識や諸制度・参考事例などをまとめた「ハンドブック」による情報提供を行っています。また、介護対象者1人につき、延べ366日まで回数制限なく取得できる介護休業制度の運用や、定期的な介護相談会の実施など、社員一人ひとりのライフステージに応じたサポートを充実させています。
介護に備えるリテラシー教育
社員一人ひとりが自身の介護リスクを知り、いざという時に備えて必要な知識を事前に習得することで、本人と職場双方の理解を深め、「仕事と介護」の両立を実現することをめざしています。2024年度には、介護を理由とした休業や離職の抑制を目的として、支援システムを導入しました。
ニューロダイバーシティに関する取り組み
一人ひとりの脳や神経の違いを理解し、多様な特性を持つ人々が協働することで、変化に強く、新しい価値を生み出しやすい組織風土の醸成につなげていくために、2024年度からニューロダイバーシティに関する取り組みを開始しました。
初年度はニューロダイバーシティについての理解を深めることをテーマに、eラーニングやセミナーを実施しました。
関連する制度
メンター制度
社員一人ひとりのキャリア形成を支援するため、「メンター育成研修」を修了した社員がメンターとなって、これまでの経験や知識を活かしながら、メンティが自分らしく問題解決できるよう支援する制度を運用しています。
現在、社内で認定された約80名のメンターが、3年の任期で活動しています。これまでは、若手から中堅のメンティを意識した中堅メンターの育成に注力してきましたが、2024年度にはミドル・シニア層のメンター育成にも取り組み、制度のさらなる拡充を図っています。
D&I推進のあゆみ
男女雇用機会均等法の改正に合わせ、1997年には女性社員の採用促進と職域拡大などの強化をスタートとし、その後も多様な人材が活躍できる風土の醸成をめざして、の取り組みを推進しています。2016年には、本社の労務部門内に「ダイバーシティ推進室」を、各事業部・グループ会社に「ダイバーシティ推進委員会」を設置。2018年6月には、専任組織として「ダイバーシティ推進室(現在はD&I推進室)」を独立させて、ジェンダーギャップの解消や障がい者、LGBTQ+、シニアや外国籍の社員なども包摂し、社員一人ひとりの多様な個を尊重し、その強みを活かしていく取り組みをや制度の拡充を進めています。