DNPの機能性フィルムの可能性 ― 持続可能な社会の実現に向けて

社会に役立つ機能性フィルムのイメージ

自動車業界とIT・エレクトロニクス分野とが融合するなど、世界規模でビジネスのボーダーレス化が進んでいる。この大変革期に、DNPは従来の枠を超えてビジネス領域の拡大を進めている。そのひとつ「機能性フィルム」分野は、あらゆる分野の新製品開発につながる有望株だ。今回は、この分野を統括する専務執行役員の山口正登に、DNPの機能性フィルムが社会に果たす役割や強み、将来の展望について聞いた。

  • 「社会課題解決」を開発のコンセプトに
  • 世の中のトレンドを捉え、未来に向けた製品作り
  • 全社体制で情報収集力と技術力を集結
インタビューに応じる専務執行役員 山口 正登





大日本印刷株式会社
専務執行役員
山口 正登

1975年4月、大日本印刷へ入社。2008年6月、ディスプレイ製品事業部の担当役員に就任。現在は、生活空間事業部、モビリティ事業部、高機能マテリアル事業部を担当している。

「社会課題解決」を開発のコンセプトに

「製品開発のコンセプトは、DNPの強みである『光』『熱』『気体(空気)』『液体(水)』『エレクトロニクス』などを制御する機能を持ったフィルム群。そこでめざすのは、環境負荷の軽減、フードロスの削減、高齢者社会における労働力不足解消など、持続可能な社会の実現に寄与することです」と、山口は語る。

印刷事業で培った技術をベースに、DNPは薄膜形成技術、微細加工技術、ラミネート技術を確立し、機能性を追求したフィルム製品を生み出してきた。DNPの機能性フィルムは既にさまざまな製品に使われている。例えば、スマートフォンに内蔵されているリチウムイオン電池用バッテリーパウチや太陽光パネルのバックシート、食品包材、反射防止フィルムなどのディスプレイ製品や住宅の床用シート材、医療・産業用包材などにも幅広く使用されている。

機能性フィルムの可能性について語る山口

山口は「持続可能な社会という切り口で見ると、すべての業界に共通して機能性フィルムが求められていると思います。例えば、食品業界ではモノマテリアルやリサイクル、植物由来の製品。自動車業界では軽量化や燃費の向上が追求され、CO₂削減につながるような製品が求められています。機能性フィルムは非常に広がりが大きい。ひとつひとつの市場が小さくても、求められているのは非常にレベルが高いものです。我々も、そこはやる気になります」と意欲を見せる。

「ただ、あまり飛び地で頑張っても、知見がないものは、すぐにまねされて消えていくことになる。知的財産権の視点も考慮しつつ、DNPの強みがどこにあるかを常に意識しながら製品開発を進めています」

世の中のトレンドを捉え、未来に向けた製品作り

DNPはトレンドを的確にキャッチし、未来に向けて製品を開発することをめざしている。最近では、自動車用の加飾パネルを応用して、木目柄や幾何学模様などの高意匠の製品と必要に応じてディスプレイや操作スイッチなどを表示する光学性能を融合させた「デザインファンクションパネル」を開発。先進的なシームレスデザインを実現した。

デザインファンクションパネル

デザインファンクションパネル

また、非接触でEVに充電できるワイヤレス技術が世界的に注目を集める中、DNPはコア部材であるワイヤレス充電用のシート型コイルを開発している。これも機能性フィルムの応用製品であり、コイルパターンの最適化と長年培ってきたフォトリソグラフィ技術※を活用し、薄型・軽量な上、漏洩磁界を低減させ、大電力伝送にも対応可能な製品だ。

  • フォトリソグラフィ技術:感光剤を塗布したシリコン基板などに、原板となるパターンを紫外線などの光放射で照射し、露光させ、回路などのパターンを生成する技術のこと。
DNPフレキシブルLEDシート
DNPフレキシブルLEDシート

また農業分野では、人工光を利用した植物工場の拡大が期待されているが、そのような工場向けのLED照明「DNPフレキシブルLEDシート」の量産も開始している。食料自給率の向上や安定供給、食の安全性向上などの課題解決に貢献できる製品だ。

DNPフレキシブルLEDシートを使用した植物工場の様子

全社体制で情報収集力と技術力を集結

では、なぜこのようにDNPの機能性フィルムの活用領域は広がっているのか? 山口は、それはDNPの情報収集力にあるという。DNPは「環境とエネルギー」「住まいとモビリティ」「食とヘルスケア」「知とコミュニケーション」の4つを成長領域に掲げているが、その中で数万社とビジネスの付き合いを持つ。各社のニーズや将来構想に耳を傾けることで、よりエンドユーザーに近い有効な情報を得ることができるのだ。そのために、社内の情報共有化を進めたほか、技術開発における社内組織も横断的なものにした。

「オールDNP」の体制について語る山口

「単独の事業部では動かせなかったものを『オールDNP』にすることで、ニーズをつかむ営業はもちろん、技術開発者達はほかの事業部の領域でも『自分たちのマーケットだ』という見方ができるし、その分野の課題にも関心を持てます。エンドユーザーの課題を抽出し、ニーズを拾い上げて捕まえるのは非常に大事。そこがDNPの強みです。能動的に動ける体制を作り、課題を抽出する、みんなの力が出てきたことが大きい。それを共有化して強みを生かせる製品を作ることが、真の強みとなるのです」

また、他社と協働するオープンイノベーションの取組みも進めている。機能性フィルム製品については自社開発ができるものの、自動車業界や流通業界の課題には、DNPだけでは解決できないものが多い。「そういう場合は、躊躇なくその道のプロと連携します」と、山口は語る。

DNP多機能断熱ボックス

2019年4月に「地球環境大賞」(主催:フジサンケイグループ)で大賞を受賞した「DNP多機能断熱ボックス」は、酸素などの気体を通しにくい「ハイバリアフィルム」を活用した真空断熱パネルを内蔵した製品で、その活用においては流通のプロである郵船ロジスティクス株式会社と連携している。電源なしで荷物を定温輸送できるためCO₂削減につながる上、常温の荷物と混載が可能なので、トラック運転手不足の緩和に寄与すると期待されている。

山口は、開発には2つの視点が必要だと語る。それは10年先を見据えた開発への邁進と、「足元の技術」をコツコツと改良していくことだ。「2つの視点で見ていかないと、10年先の未来がいまの延長線に必ずしもあるとは限らない。もっと大きく見て、将来の姿はどうあるべきかを考える。まさに未来のあたりまえをつくる、ですね」と語った。