透明アンテナフィルム
快適な情報社会に欠かせない
通信環境の課題に、
5Gのポテンシャルを解き放つ
透明アンテナという翼

  • ディスプレイ関連製品・電子デバイス

プロフィール
PROFILE

  • ファインデバイス事業部
    営業
    2004年に入社し、研究開発センター配属。インクジェット方式の液晶カラーフィルターのプロセス開発、生産ライン立ち上げに従事。2008年にディスプレイ製品事業部(現所属先)へ異動。2014年米国駐在。2018年から営業・企画・マーケティングを推進。
  • ファインデバイス事業部
    研究開発
    2012年入社。研究開発センター配属。パターニング技術開発部門で、真空設備のプロセスや材料などの開発に従事。2019年に現所属先に異動し、透明アンテナフィルムの開発に関わる。
  • ファインデバイス事業部
    研究開発
    2005年入社。ディスプレイ製品事業部(現所属先)に配属。ラージスケールフォトマスクのプロセス開発に関わる。2012年から三原工場(広島県)の製造ライン立ち上げに従事。2014年から上福岡工場(埼玉県)でLEDリフレクターの製品評価技術に取り組む。2017年より新製品開発を推進。

「DNPならできるんじゃないか」
周囲の期待感から開発はスタートした

飯村

私たちが開発している「透明アンテナフィルム」は、透き通ったフィルム上に、目に見えないほど細かい金属配線を超微細なメッシュ(網目)状に形成したものです。優れた透明性が特長で、各種ディスプレイはもちろん、室内の壁や天井、建造物や車体のガラス等に貼ることで、アンテナとして使用できます。

木下

高速大容量・低遅延・多数同時接続のデータ通信を実現する第5世代(5G)移動通信システム用の電波は、近くにあるモノの影響を受けやすく、アンテナ設置場所の自由度が低いという課題がありました。こうした課題に対してDNPの「透明アンテナフィルム」は、高い透明性によって周辺の意匠性を損なうことなく、さまざまな場所に自由にアンテナ機能を追加できます。

坂田

開発のきっかけになったのは、ある顧客企業とのディスカッションでした。6年ほど前に、DNPの新しい技術を紹介しながら、未来の製品についてディスカッションを行いました。その際の、「DNPなら目に見えない金属配線で、新しい機能を付与できるのではないか」という声をヒントに、DNPのコア技術の一つである「微細加工技術」を活かして実現できないか、検討を行ってきました。実際に、1μm(マイクロメートル:10の-6乗m)の金属配線を作成すると、配線を視認できない状態になることを発見しました。

木下

配線を微細化していくと、一般的に電気抵抗が大きくなりますが、さまざまな用途で使用するためには低い抵抗値が必要でした。私たちが新しい技術を開発して、微細化と電気抵抗とのトレードオフの関係にあるこの課題をクリアできれば、まだ世界に存在しない製品が開発できる可能性があります。そうした期待を胸に、開発をスタートさせました。

坂田

私が営業という役割、木下と飯村が開発という役割で、全体で十数名のチームで取り組みました。営業としての最も大きな役割は、「市場分析」と「顧客への提供価値を明確にすること」です。新しい価値を社会に広く届けていくためには、生み出していく製品が、今の、そして未来の人々に必要とされるかどうかを確かめていく必要があります。そのため、社内のマーケティング部門と協働して社会のトレンドを見ていきました。DNPが培ってきた顧客企業との信頼関係を活かし、さまざまな会社のアンテナ関連部門の方々から、現場の声を直接集めることも地道に行いました。そうすることで、私たちが開発する製品が世の中に出ていくまでの道を、模索していきました。

木下

得られた情報は、毎週チーム全員で共有しています。とにかく、まだ世の中に存在しない製品を開発していくので、どんな仕様であれば活用される可能性が高まるのかということについて、開発担当としても積極的に情報収集して、開発に活かすようにしています。

「難しいことにこそ挑む価値がある」
そのモチベーションが競争優位性につながる

飯村

私はもともと微細加工技術の研究をしており、「透明アンテナフィルム」が本格的な開発段階に入ったタイミングで、このチームに加わりました。開発リーダーである木下には、このプロジェクトの一貫した開発目標の設定に関して、妥協の無さを感じます。私だったら妥協してしまいそうなところでも、「もっとここまでいこう!」と引っ張ってくれています。

坂田

正直、同じような製品をつくろうとしている企業も現れてきています。ただ私たちは当初から、モバイル機器という、人の目と対象物の距離が非常に近い用途で、この製品が使われることをめざしてきました。遠く離れれば離れるほど、技術的な難易度は下がりますが、最初から難易度の高いところで勝負しようという方針は、私たち営業と開発メンバーで共有できています。

木下

非常に開発難易度が高い製品なので、その実現を目標に掲げ続けるのかということについては、開発を率いる者として自問しました。その中であらためて、DNPが持つ強みは、簡単なものをつくって市場に拡げていくことではなく、難易度の高い開発に挑んで世の中に無いものを生み出すことだと強く感じました。飯村をはじめ、DNPの新入社員も、技術者として「難しいことに挑戦したい」「社会にインパクトのある製品・サービスを生み出したい」ということをモチベーションにして働いているため、非常に頼もしいですし、だからこそ低い目標設定はできない、と感じています。

飯村

サンプルを作成していく過程で特に重要なのは、微細な配線パターンをつくることです。この微細配線形成プロセスにはもともとDNPの強みがあり、パターン形成自体はスムーズに行うことができました。ただ、それがアンテナとして機能するかどうかという判断が、社内だけでは十分にできないことが課題でした。正直な話、大学の研究室時代の自分であれば、この段階から先に進むことは難しいとあきらめていたかもしれません。しかし坂田があらゆる顧客から意見をもらってくる姿や、木下が目標を高く掲げて先頭でリードしている背中を見ているので、自分もチームの一員として、できるアクションはないかと模索しました。社内のアンテナに詳しい部署から情報収集をしたり、大学やパートナー企業との連携を進めたり、まだ乗り越えるには至っていないものの、チームで一歩ずつ前進できている手応えがあります。

坂田

チームが大所帯ではないことが、逆に私たちの強みになっているのかもしれません。現在はオンラインツールも整備されていて、全員が集まって話すハードルは高くありません。全員が顧客企業からの最新の声や市場の状況、開発の進捗などを共有できているので、「指示を受けてやらされている」という意識ではなく、各メンバーが自発的にそれぞれの立場でプロジェクトを推進していると感じます。

木下

営業と開発では立場が違うので、意見が一致しないことももちろんあります。ただ、めざすところは同じなので、そこに向けて「やるべきことをやる」「できないことはできない」と言える関係の構築を大切にしています。意見が一致しない時も、無理に合わせるのではなく、進める順番を変えるなど、臨機応変に進行させるように心がけています。坂田とは入社時期も近いのですが、このプロジェクトで一緒になるまではあまり接点がありませんでした。冷たい感じの人かな、と勝手に想像していたのですが、いざ一緒に仕事をすると、見た目と違って相談しやすいですね。

坂田

どれだけ第一印象が悪かったんだ(笑)。

飯村

とにかく、コミュニケーションが活発で、全員で1つの目標をめざす良いチームです(笑)。

「はじめから答えなどない」
自分たちで「問いの設定」と「答えの創出」を続けていく

坂田

多くの顧客企業とのディスカッションや検討を経て、モバイル機器用の透明アンテナフィルムのニーズと市場性を確認できたため、開発を継続することになりました。2020年3月に「5G対応製品向け透明アンテナフィルムを開発」というニュースリリースを行い、複数の展示会出展などを行った際には、5G通信という時流にも乗って、多くの顧客企業から問い合わせをいただいています。

木下

顧客企業との接点などを通じてニーズを探る中で、「視認しにくく+低い電気抵抗で+アンテナ特性が良い製品」を実現すれば、差別化のポイントが明確な強い製品になるという仮説ができあがりました。前例となる製品がないことはDNPの競争力になるのですが、仕様の目標などもなく、常に答えがない中で開発プロセスを進めていく必要がありました。何とかニュースリリースや展示会にまで辿り着き、チームで構築した仮説が間違っていなかったことが確認できました。事業化に向けては、改善すべき課題がまだ多く残っています。今後は、技術開発だけでなく、マーケティング部門とも力を合わせて、世の中で広く使われる製品として、事業を拡大していきます。

飯村

自分が研究してきた技術が、アンテナとして新しい情報社会の発展に役立つとは、正直なところ、入社した時は想像もしていませんでした。例えばスマートフォンの中には今、5G対応のアンテナが3つぐらい入っています。DNPの「透明アンテナフィルム」を端末の表面に貼ることができれば、アンテナ1つ分の内部のスペースが空くため、そこに新しい機能を追加できるでしょう。一つの技術の社会実装が、さらに別領域の技術開発へとつながり、社会は進歩していくのだと思います。私たちのプロジェクトのゴールはまだ先にありますが、チームが一つの目標をめざしてまとまることで、個人では成し得ない品質と速度で、思いが実現していくことを学びました。DNPというチームの一員として、技術の強みを活かして、「未来のあたりまえをつくる。」ことに引き続き貢献していきます。

※掲載内容は全て取材当時のものです。

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